蓮のいけばな
昨日、今日と二日に渡って蓮のお稽古をしました。
切り花としてはお盆の時期にしか出会えない、貴重な蓮。今年は暑さのため、近所の池でも葉っぱが赤くなってしまっていたり、、、
お花屋さんががんばって仕入れてきてくださった「蓮」を4名の方に楽しんでいただきました。
お暑い中、いらしてくださりありがとうございます。
「蓮」は、ご覧の通り、茎はまっすぐ、葉っぱもかなり大きいので、初めて出会われた方は、「はて、どういけたら良いのやら?」
と迷われることと思います。
このように、お顔より大きく、葉っぱの存在感も大きいので、そこにあるだけですでに完成形です。
そして、よーく見ると、葉脈の一本一本。歯の裏表の色の違い。茎のちょっとした曲がり具合。ラインの美しさなどなど。光に透かした時のグラデーション。
見ているだけで「ほぅ」とため息が出るほど美しいのです。
しばし、お花と戯れていただきます。そうすると、お花からヒントを出してくれます。
蓮の茎は、レンコンそのもの。切り口から「藕糸(ぐうし)」という、糸が引きます。
穴が空いているため、普通の植物のように自分で水を吸い上げることが難しいので、そこは人間がポンプを使ってお水を飲ませてあげます。
すると、あら不思議。茎を通って葉っぱまで水がぐいぐいっと上がって行く途中、茎や葉っぱの裏表から水がしたたり落ちるのです。葉っぱは天然の撥水加工になっているので、綺麗な水玉が、ころころと転がり、本当に可愛い。(写真に撮る余裕が全くなく残念!ぜひ、来年体験しにいらしてくださいね)
水を十分飲ませてあげてから、じっくりといけていきます。こちらの方は、草月流カリキュラムのお稽古中。今回は「足元を見せる」という単元。写真だとわかりにくいのですが、足元がキュッとまとまり、それぞれの茎が動きを持って上に上がって行く様がとても美しかったです。
こちらの方は、一番背の高い蕾の茎の曲がりの美しさに惹かれました。その曲がりを引き立てるよう、他の2本の高さや角度に気を配りながら、葉っぱにも動きをつけて完成されました。
こちらは、「いけばな初体験」の男性。いけばなは、「ミリ単位の仕事」「線の美しさを見つけるもの」とわかってくださり、ていねいに、花の良さを見出し、かつご自分の中に浮かび上がったイメージを表現されます。
「打ち上げ花火」をイメージされたそうです。しゅるる〜っ パン!という心地よい音が響いてきそうですね。あぁ、スカッとします。
もうお一方は、ガラスの円柱の花瓶に、水中の茎の美しさと器のから出ている葉の裏表の色の違いや後ろ姿の美しさに注目され、いけあげられました。(写真を撮り忘れてしまい、とっても残念・・・)
どの作品も、蓮の優しさ、包容力、美しさ、力強さを思う存分発揮された作品。蓮も皆さんとおしゃべりができてとっても嬉しそうでした。これだけパワフルなお花だと、なるべく人間が手を出さず、蓮の存在そのものを感じていたいと思ってしまいます。
そんな中でも、お一人お一人の、思いやご自分の内面がしっかりと現れた作品になりました。
連日の猛暑の中、お稽古にお越し下さりありがとうございました。幸せな時間をご一緒できとても嬉しいです。今回の出会いも、後からじんわり聞いてくるような気がします。
植物との出会いは一期一会。その時、その瞬間でしか表現できないものです。が、その時心の奥で感じたこと、響いたことはしっかりとご自分の中に根付き、必要な時にはすぐに感じて思い出せる宝物になっていきます。
自分でも気づいていなかった本質に気付けることもあるかもしれません。瞑想に近い状態になるのかな。
自分の小さな頭の中の知識や技術で、どうにかこうにか思い通りにするのではなく、植物とやりとりしながら感じること・気づくこと・見出したことを自由自在に表現するのが、いけばなです。
正解も結論もない。どこまでも無限に広がる可能性を一緒に楽しみましょう。